ジェルバ島3日目/Last Day in Jerba
8日目 ジェルバ島3日目 Kの日記
 とんどなにもせずに一日が過ぎた。朝はのんびりと起きて昨日と同じ朝食。そして陽がさすのを待ってテラスへ出てみる。今日もいい天気だ。港の海が静かに横たわっている。
 それぞれ思い思いの時間を過ごすと、おなかが空いてきたので街へ出ることにした。街の中心にあるレストラン、 ベルベル(Berber)で昼食をとる。
 味に定評があり、値段も比較的手頃なのでいつもヨーロッパ系観光客で賑わっている。オジャ(oja、卵料理)を注文した。魚料理などがおいしいときくが、私にはどうも高価に思える。(日本円で考えれば大したことないのだが)加えて魚料理はチュニジア人のよくいる大衆的な食堂ではあまりみたことがない。観光客向けなのだろうか。オジャは2.5TD。結構いける。上品な味。
 午後、Eと私は街のスークをぶらついた。スークはもともと職人達のギルドだった。漆喰でつくられたしろい穴蔵のような建物に、革職人、織物職人、鉄職人などの工房が並ぶ。中は薄暗く、夏でもひんやりとしている。それぞれの工房は畳で言うと2畳から3畳ほどではないだろうか。といっても、現在はみやげ物やや日常品を列べる店があるだけ。完全に観光客目当てに変わっている。しかし、カイルーアンやチュニスなどでは今でも職人達の働く姿を見ることが出来る。
 布を扱っている店をのぞく。ベルベルの婚礼用の布が目にとまった。アンティーク(要するに古い)だと100TD、 新しいもので250TDもするという。赤の格子地に金や銀の刺繍が施されていて豪華。
 ジェルバの女性が巻いているずっと日常的な布もあった。白の木綿の長方形の生地。中央にオレンジや赤の糸で一本の線が刺繍されている。地が紺色(インディゴ)のものもある。一般的に目にするのは白の方。25TDだった。他に白の木綿で出来た可愛らしい民族衣装もあった。(図)
 私とEが街をぶらついている間、Uはずっと絵を描いていた。建物や街の風景をスケッチしていたのだが、そこは陽気なチュニジア人のこと、みんな興味深げに覗きに来てはからかっていく。感心してほめる人もいれば、自分も絵を描くといってアドバイスまでしていく人もいるという。でも、そのお陰でまた素敵な出会いがあった。
 待ち合わせの時間(4時頃だろうか)に現れたUは、これから子供のポートレートを描いてあげる約束をしてきたという。もちろん喜んで我々もそれにつきあうことにした。絵を描いていた場所のすぐ近所の人が 自分の子供の絵を描いてくれないかと言ってきたらしい。
 とてもかわいい男の子だった。年は10才ぐらいだろうか。目がくりっとしていて、はにかんだ笑顔が愛らしい。実は、その子は耳が聞こえず話すことが出来ないらしい。父親である男性が照れて自分の後ろに隠れていた男の子を家の前に座らせた。じっとしていなさいと身ぶりで伝えている。お金も施設もないのだろう。男の子は手話はもちろん、ちゃんとした教育を受けていない。話はすべて家族の身ぶり手ぶりのみでどうにか通じているようだった。 それでも、家族の愛情をいっぱいに受けて素直に育っていることが、ちょっと見ていただけの私たちにも伝わってきた。

 男の子と向かい合って私たち3人が座った。Uが絵を描くあいだ、私は彼と目と目で会話を交わした。とても表情が豊かで、茶目っ気があっていたずらっ子である。なかなかじっとしていない。父親を初め、集まった近所の人まで心配げに見守っている。父親が待っている私たちへと、ボガを差し入れてくれた。
 数十分後、無事絵が描きあがった。みんなどうやら満足してくれたようだ。父親はよろこんで家に飾るよ、といってくれた。男の子はというと、絵の中の自分を見て更にはにかんだ表情を浮かべた。カメラをもって出かけなかったので、男の子の写真はない。でも、今でもその子のきれいな澄んだ瞳と生き生きとした表情をありありと思い浮かべることができる。そして、彼を囲む暖かい家族のことも。とても印象深い人々だった。
 その場を離れたときにはすっかり、日も落ちていた。結局、またベルベルで夕食をとることにした。白いんげん(Haricots Blancs)をたのむ。私の好物である。
 この晩、結局次の朝早くジェルバを出ることに話がまとまった。ルアージュを使って一気にチュニス、シディ・ブー・サイド(Sidi Bou Said)まで北上である。 500キロはある。一日がかりになるだろう。荷物をまとめて早く寝ることにした。いよいよ南とは今度こそ本当にお別れなのだ。



夏には気持ちよさそうな女性用の日常着。

ホテルの前の港。使われない船が散らばる静かな海。Uのノート。

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