チュニスへ/Back to Tunis
9日目 チュニスへ北上 Kの日記
 時起床。急いで朝食を済ませて、一路駅へ。前日に手配してあったルアージュが我々を待っていた。ところが、残り一つの席がなかなか埋まらない。結局長いこと待たされることに。駅にはルアージュ全体をまとめている事務所のようなものがあり、その元締めらしいどっしりとしたおじさんがしっかりと全体をとりまとめているようだった。短距離のルアージュがどんどん出発していくのを横目に我々のみが待たされる。
 どうにか30分ほどであとの一人が決まり、出発となった。一人16.5TDを運転手に手渡す。やっと走り出したものの、運転手の男がなかなか人がいいらしく、スピードを出さない。チュニジアには珍しく安全運転だ。途中、予約してあったらしい最後の男をピックアップする。その男の自宅の前で車が停まった。どうやら長い別れになるようだ。せまい道の反対側で、男は家族の一人一人と4度ずつキスを交わしている。無口で無愛想な男。それとも、照れくさいだけだったのだろうか。男が運転手の隣に乗り込み、車がゆっくりと走り出した。すると、母親らしき女性が道を横切って車を追いかけ何やら叫んだ。 車は無情にもそのまま出発した。男も振り向かない。後には道の真ん中に呆然と立つ女性が残された。ジェルバ特有の白い布を全身にまとっている。
 これで、運転手を含め、6人の、500km、8時間あまりの長い旅が始まった。
 ジェルバから本土に渡る船が混み合いしばらく待たされる。フェリーに乗り込む車がのろのろと列をなす。人々は我慢できずに外に出て海を眺めたり心配げに様子を見守っている。ちゃんと夕方にはチュニスに着けるのだろうか。3人とも不安になる。
 やっと船に乗ることが出来た。船といっても水平に動く盆のような形をした鉄の塊といった感じだ。船にはとうてい見えない。たった10分ほどのことなのに、みな甲板へ出て景色と海風を楽しむ。途中、なんと3頭のイルカが船を追いかけて顔を出した。私たちは思わず、 イルカだー!!!と叫んで立ち上がった。キレイに並んだ背中が水面にのぞく。野生のイルカを見たのは初めてだった。イルカは結局最後まで私たちを見送ってくれた。何度かこのフェリーを利用しているが、こんなことは初めてだった。やはり季節がいいのだろうか。
 上陸すると、やっとスムーズに走り始めた。後はひたすら走るのみ。南から北へとどんどん移り変わっていく風景を眺めながら、みな無言である。
 ガベスを過ぎ、カイルーアンへの途中、いい加減に空腹も絶頂に達した頃、昼食のために車が止まった。あたりには何もない。一本道にぽつんと建つ小さな食堂。運転手は常連らしい。フランス語が話せない店の者に代わって彼が注文をとってくれた。私たちはクスクスとミネラル・ウオーターを頼んだ。こんなに冷えた水がおいしいと感じたことはない。クスクスは具がすっかり崩れ、見た目はかなり悪いが、味が染みこんでいてなかなか美味。何日も煮込んであったようだ。店の若者がお茶を飲むかと聞いてきた。緑と黒のお茶があるという。両方適当に頼んでみた。緑のお茶はミントティーをかなり濃く入れ、甘くしたもの。黒いお茶は紅茶を同じように入れたものだった。やはり、 ここに日本の緑茶があるはずないか
 全部で2TDだった。どう計算したのかは不明。メニューはアラビア語しかない。どっちにしても他のところで食べるよりはずっと安い。

 その後、一度も止まることなく、無事にチュニスへ到着した。夕方5時をまわっていた。とにかく無事にたどり着いたという感慨が強い。運転手にお礼を言うと、タクシーをつかまえて街の中心へ向かう。その晩はシディ・ブー・サイドに泊まる予定だった。チュニスは今回も通り過ぎるだけ。目的地へはT.G.Mという市電を使う。シディ・ブー・サイドまでは30分ほど。0.5TDだった。こんなことになろうかとホテルは予約してあった。丘の上にあるシディ・ブー・ファレス(Sidi Bou Fares)の3号室。白とチュニジアンブルーが基調のなかなか雰囲気のある建物。パティオを囲むように部屋が配置されている。ダブルベッドが1つとシングルが1つの部屋で28TD。朝食、シャワー、トイレ付き。共同のキッチンもある。チュニジア人の若い夫婦が経営しているらしく夜遅くまで賑やかだった。主人の弾くギターの音が聞こえる。客も若いフランス人やベルギー人達で、パティオの椅子に座って遅くまで語り合っていた。我々もつられて珍しく夜更かしになる。奥さんにたのんでコーヒーを入れてもらって中庭でいただく。南の空気とは 一転してヨーロッパのリゾート地へ迷い込んだようだ。
 旅ももう終わりが近づいたのを強く実感させられた。結局、旅の疲れも忘れて眠りについたのは12時だった。 とうとう明日は10日目である。


本土へ渡る岸にあったキオスク。屋根の上にファティマの手と魚。


フェリーの出る海岸。廃船が横たわっている静かな海。

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