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季節はずれの夏休み in Zarzis/Tunisia
寄稿: 植澤 晴夫
第八回 原・現地人のベルベル人
(今回は突然、遠州弁と東北弁の会話になるのでご注意!)
*あるBerber宅を訪問!
とある夕方、浜辺であるBerberと知り合った。というより彼は仕事で私に近寄ってき
たのだが。型どうりに、「元気?」とか「ここ、気に入ってる?」とか聞いた後で、
目当てだった「馬車で町見物せえへん?」という質問をしてきた。家内が例の「アラ
ブ式値切り法」でやりはじめると、「ちゃうちゃう、ワシラァ、アラブの連中とは違
うら。駆け引きぃせえへん」などと言う。「一人でも二人でも15!安いもんダ
ラ。」
おやっ、彼は私が興味を持っているチェニジア原住民ではないか!「オメダ、ベルベ
ルダガ?(訳:あなた方はベルベル人ですか)」「ん?お前え、ナマってるら。う
ん、そうらベルベルら。」
やったー!これは千載一隅の仲良くなれるチャンス。「んだば、まんず馬ッコ見デモ
ンダナ」「そうか、そうか。じゃ俺んちへ来な。馬車ごと見せっからよォ。お茶だっ
て煎れてやるら。緑茶好きダラ。」ん〜、もう感激で胸がいっぱい。「よしっ!オラ
見さしてもらうべ。」
そして、彼が案内する暗がりの中を10分も歩いたろうか。馬と馬車が玄関に置いて
ある、とある家へ着いた。玄関に入ったとたん、バラッバラッと若い男や子供が5〜
6人すばやく出てきて、ビックリし、思わず騙されたか!と身構えてしまった。
しかし何の事は無いみんなニコニコして我々を見ている。ア〜、安心した。みんなの
紹介が済み、ひとしきり馬と馬車の話を聞かされ、また馬車で走るルートも写真で見
せてもらい、じゃあ明日夕方、という事で話がついた。「じゃ、俺んちへ行こう。」
と彼が言う。待ってました!喜んで。
その隣が彼の家だった。
玄関の前に大きな長い絨毯が敷いてあり、柔らかい枕みたいな座布団を出された。そ
うしたら、みんながぞろぞろと次々に出て来るではないか。なんだこの家は!いった
い何人ここに住んでるんだと、びっくりしてしまった。よくもまあこんなにウヨウヨ
沢山一緒に住んでいるものだ。驚き!お爺さんにお婆さん、お父さんとお母さん。そ
の子供達が女6人、男3人の9人兄弟。長男夫婦とその子供が数人。出戻り!の次女が
子供連れ。お婆さん、長女、3女、長男はいなかったけれど、人数の多さにはまった
く驚かされた。
*チェニジア風グリーンティー
長男の嫁さんが「しちりん」を持ってきて火を起こし、炭火でお湯を沸かし始め
た。煮立ったお湯を別の容器に移し、その中にペパーミントの葉を10数枚も入れてお
く。今度は陶器の「キュウス」に少し水を入れ、粉末の紅茶・ブラックティー、それ
に砂糖を大さじで2杯、3杯と入れてしばらく煮立てる。20分くらい経って、今度
はペパーミントの入ったお湯を飲む人の量だけ注ぎこみ(この場合は5人分)ゆっく
りと数分間かき混ぜた。こうして小さなリキュールグラスに3分の2くらい注ぎ、で
きあがりだ。
「さあ、どうぞ、召し上がれ。」と長男の嫁さんが、お盆に乗せたグラスをニッコリ
して私に差し出した。このエジプトのクレオパトラかと見紛うばかりに美しい嫁さん
の微笑みに、にわかファラオの私はクラックラッとしながらも、毒が入っているので
は、などとチラッと思いながらこのお茶を受け取り、「ええい、為るが間々よ。」と
ばかりにグッと飲み込んだ。
甘い!これが第一印象。紅茶とペパーミントの香りや味が強い。成る程、これが彼等
のGreen Teeか。砂糖の甘さと、紅茶の渋み、そしてぺパ−ミントの強い香りが強烈
にミックスしている。うん、なかなかイケル。(毒は入ってないようだ。)私はこの
小さなグラスに入った茶褐色の熱い液体を一気に飲み干した。「どう、大丈夫?」
「うん、こいだばウメ。こんたにウメとは思わねがった。」「そう、そりゃ良かっ
た。じゃあ、またいれるけんね。」と結局4杯もいただいてしまった。このお茶
「キュウス」が小さいから一回で5人分しかいれられない。私が飲む度にクレオ
パトラさん、また始めからいれなおしてくれた。
その夜、このお茶のせいか、はたまたクレオパトラさんのせいか、興奮してしまい、
結局一睡もできなかった!
*突撃インタビュー
Mekkiという、そもそも私に近づいてきた男に聞いた。
「こんただいっぺ家族いで、他の家も皆こんただが?」「そうら。ま、大体どこでも
夫婦にゃ6人や9人の子供ザラだら。」「生活大変だべ?」「俺っちみたいに女が多
いとな。女は働かないでくっちゃべってばっかしダラ。フランスに出稼ぎいかにゃあ
やっていかれへんよ。」この発言に女性陣はただニコニコしている。ここでは、女性
が外へ働きに出ることは禁止されている。買い物も男の仕事である。女性はあくまで
も子供を産み(それも男の子を)家庭を守るのが仕事のようだ。子供を産まない女は
離縁の対象となる。結婚するまでは良かったが、した後は完璧な男性主体の世界だ。
「あんだ、結婚は?」「来年。できたらね。でも俺っち、運が無えら。幸せなんて望
めないら。」「えっ!なんでまたそんただこと……。」「俺、学校行ってねえら。そ
れに特にこれってモン持ってねえし。ここんところずっと観光客減ってさ、馬車もな
かなか曳けねえ。ああ、俺もフランスいきてえら。」「ふ−ん、そりゃ困ったもんだ
な。」彼も、ヨーロッパ不況の波を受けているのか。
「ところで、あんだはベルベルみたいに見えるけど弟はそう見えねな。」「弟か。弟
はおふくろに似たかんな。俺は親父似さ。おふくろはベルベルじゃ無いさ。」
「えっ、ベルベルはアラブ人と結婚するのか。」「そうら、何かおかしい?」「い
や、別におかしくはねども。」そうか、それで分かった。ベルベルでもアラブ人の顔
をしている人がいるわけだ。それだったらエジプト系やユダヤ系だっているわけだ
な。考えると、かく言う私だって母親似で縄文顔だが、父親は完璧に弥生顔だ。こん
なことはどこにでもあることなんだなあ。
「黒人とは?」「黒人とは結婚はできねえなあ。アラブ人でもベルベルでも。そんな
の聞いたことねえ。」ふーん。黒人とは結婚しないのか。何故だろう。聞きたかった
が、家内がもうこんな事聞くのはやめろ、と合図してきたので、我が女王様の仰せに
したがって残念だが質問はあきらめる。「明日から学校だな。」明日から夏休みが終
わって学校が始まるのである。「いや、学校なんて行かねえ。」と弟。彼はまだ見た
ところ13〜14歳くらいか。「えっ、なんで?」「なぜって、俺兄ちゃんと一緒に
仕事するんだ。学校で勉強なんかする必要ねえ。」「学校行った事あっが。」「1日
だけな。」口をあんぐり。生活苦の為かそれともそれが普通なのか?まあ、これはあ
んまり突っ込むのはやめよう。
と、こんな話をしている間に女性陣は私たちの話がつまらないので、てんでに大きな
声で何か真剣に話をしている。説明によると隣近所の噂話だそうだ。弟が「女は口が
軽い。Pla、Pla、Pla。一日中話ばっかりしてる。」と、さも大人のような事を言
う。「そんなことあらすか!」と、お姉さん。出戻りのお姉さんに、離婚関係の話が
聞きたかったのだが、こんなに大勢の前ではちょっと聞けないのが残念だ。
「私もう結婚できないからスイス行きたい。」などと言う。「結婚できね?」「う
ん。離婚した女はまずもう貰い手がいねえら。テレビでスイス見たんだ。キレイな所
ら。この子供と一緒に連れてって。」「そ、それは、困る。」この、私の叔母さん
そっくりのこのお姉さん、なんだかかわいそう。まだ30前のようだが、シワのよっ
た汚れた裸足に生活がにじみ出ている。大体がここの人々は裸足の人が多い。海浜で
生活していて、靴が必ずしも必要無いのかもしれないが、熱く焼けた砂浜や石ころの
多い道路など歩く時は大変だろう。
せっかく、ベルベルの人達と話ができたけれど、聞きたいことがあまり聞けなかっ
た。彼等はベルベルではあるけれど、アラブ語の方言を話し、ベルベルの共同体で生
活していないから私の質問とはあまり噛み合わない。それに、皆の前で、個人的に立
ち入った事は質問できない。いずれ折を見て聞いてみたい。別れ際、住所を聞いてま
た遊びに来る約束をした。
それにしても、この彼等家族の性質は町で会うアラブ人たちとは違うように感じ
た。おとなしくて、正直のように感じた。一般のアラブ人はダイレクトで気性はもっ
と激しい。食いついてきて離れないしつっこさがある。それでも、傷つきやすくて、
すぐにしょげてしまうところがアンバランスで可笑しい。ムハマドの子供達は商人の
子供達であるから(イスラム教の始祖ムハマドは商人であった)駆け引きを得意とす
るが、駆け引きが失敗するとすぐに落ち込んでしまうのである。その気が無かった
ら、彼等とは駆け引きの場につかない事が懸命である。
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